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活動報告(同窓の皆さまへ)

2018年度 活動報告

 

 平成31(2019)年度は青木正志教授が着任されて9年目に入りました。東北大学病院も遅ればせながら平成31年4月から脳神経内科と標榜することになりました。講座名は従来のままで、東北大学大学院医学系研究科感覚器病態学講座神経内科学分野となっております。

 平成30年7月に病棟再編が行われました。脳神経内科病棟は西11階から東12階に移動になり、東12階病棟では、高次脳機能障害科、てんかん科、肢体不自由リハビリテーション科、内部障害リハビリテーション科と当科とを合わせて5科で運営されることになりました。気軽に相談しやすい環境になった反面、医師数が著明に増加したため診療端末が不足がちになるという不都合も生じています。そういった状況の中でも、10月に病棟医長に就任されました割田仁先生の強力なリーダーシップのもと、病棟の先生方の頑張りもあり、入院までの待機期間が約1〜1.5か月に大幅に短縮され、稼働率も順調に伸びています。

 平成31年4月に齋藤元一先生(岩手医科大学卒、東北大学病院で初期研修)、齋藤早紀先生(福井大学卒、東北大学病院)、佐藤一輝先生(滋賀医科大学卒、大崎市民病院)、山本尚輝先生(東北大学卒、仙台市立病院)の4名の新進気鋭な後期研修医が入局しました。齋藤元一先生はみんなから愛されキャラとして受け入れられています。齋藤早紀先生は近年まれに見る気遣い上手であり一目置かれています。佐藤一輝先生は初期研修後に1年間大崎市民病院病院の脳神経内科で研鑽を積まれました。まじめで即戦力として期待されております。山本尚輝先生はとても気さくであり誰からも好かれております。この1年間は病棟勤務になりますが、これから様々なところで個性を発揮してご活躍されることと思います。

 平成30年9月に四條友望先生、平成31年3月に小野紘彦先生が学位を取得されました。四條先生の博士論文のテーマは「生体内星状膠細胞の活性化と増殖を制御することによる筋萎縮性側索硬化症の進行抑制」であり、変異ヒトALS関連変異SOD1過剰発現ラットの脊髄前角のアストロサイトではアストロサイト活性化因子のひとつである骨形成蛋白質(BNP)が疾患進行に従い増加し、このBMPを阻害することによりALSラットの罹病期間が延長し運動機能低下を抑制できることを明らかにしました。小野先生の博士論文のテーマは「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の免疫病態に関する研究」であり、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群にはT細胞・B細胞の活性化や制御性T細胞の減少などの自己免疫疾患と共通する免疫病態が存在することを明らかにし、また診断に有用なバイオマーカーの候補を見出しました。これらの素晴らしい業績は学会報告、学術誌掲載などで国内外から高く評価されております。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)・筋疾患研究グループ、多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)研究グループ、Parkinson病(PD)関連疾患研究グループがそれぞれ複数の国内外で評価される研究成果を挙げております。特筆すべきことは、若手研究者の目覚ましい活躍です。昨年の第59回日本神経学会学術大会において、渡辺靖章先生が演題名「ALS-associated C21ORF2 mutation enhances the autoregulation mechanism of NEK1」で優秀口演演題(基礎部門)に、小野洋也先生が演題名「Novel binding partner of dysferlin is a potential therapeutic target for dysferlinopathy」で優秀ポスター演題(基礎部門)に選出されました。今年の第60回日本神経学会学術大会においても、江面道典先生が演題名「Evaluation of differential diagnosis in tauopaties by 18F-THK5351 PET」で優秀ポスター演題(臨床部門)に選出されております。また、平成31年4月に小林潤平先生が2019年度生体アミンと神経疾患に関する研究助成を受賞しております。

 ALS・筋疾患研究では、家族性ALS(fALS)のゲノムDNA解析を行い、SOD1変異、FUS変異、TARDBP変異、OPTN変異を同定し、臨床表現型の特徴を明らかにしました。FUS変異を有するfALS患者由来のiPS細胞から運動ニューロンを分化誘導後、トランスクリプトーム解析でFUS変異がもたらす表現型と関連する遺伝子を見出し、その遺伝子の発現抑制が形態異常を正常化させることを明らかにしました。ALSに対する肝細胞増殖因子(HGF)脊髄腔内投与の第I相試験結果を学術誌に発表し、第II相試験(医師主導治験)を継続実施しております。医師主導治験は資金繰りが大変な中、皆で力を合わせて頑張っております。

 MS・NMO関連研究では、一側性ないし中心性の急性皮質性病変を生じる抗MOG抗体関連脱髄疾患があり、ADEM様に発症する群と同様に免疫治療が奏功し、脱髄の指標であるMBPなどはあまり上昇しないことを明らかにし学術誌に報告しました。抗MOG抗体や抗AQP4抗体陽性疾患群における髄液サイトカインプロファイルを網羅的に解析し、MSやコントロールとは異なりTh17系サイトカインが有意に高いなどの特徴を明らかにしました。高親和性AQP4抗体を用いることで、NMOラットモデルを効率的に作成でき、抗原特異的T細胞の関与なしに中枢神経にNMO病変を起こし得ることを明らかにしました。

 PD関連研究では、αシヌクレイン(αS)伝播の分子機構について解析を進め、αSがドパミントランスポータ?内在化に便乗して神経細胞に侵入することを明らかにしました。マウス脳由来膜蛋白質ライブラリーと質量分析装置を組み合わせ、線維化αSと特異的に結合する受容体候補分子5つを同定することに成功しました。また、PD関連分子であるαSの核内における機能(エピゲノム制御)について、次世代シークエンサーによるChIP-Seq網羅的解析を実施し、ターゲット遺伝子を複数同定しました。18F-THK5351 PETを用いて大脳皮質基底核症候群の生体脳内病変の経時変化を可視化することに成功し学術誌に発表しました。

 平成30年10月から中村尚子先生(ALS・筋グループ)、平成31年4月から小野理佐子先生(ALS・筋グループ)、松本勇貴先生(MSグループ)、生天目知尋先生(MSグループ)、石山駿先生(PDグループ)が大学院に進学し、研究生活を送ることとなりました。また、10月から中村貴彰先生(PDグループ)が研究生活に入られる予定です。それぞれ与えられたテーマをもとに指導医とともに研究に明け暮れ、成果を学術誌に報告し、世界に羽ばたいていくことと思います。将来がとても楽しみです。
 医学部学生教育関連では、臨床修練(5年生)65名、高次医学修練(6年生)14名が脳神経内科を選択し、それぞれ4週間ずつの実習が行われました。病棟実習を中心に、外来実習、学外実習、基礎研究など幅広く熱心に指導した結果、毎年学生アンケートでは上位を争う高い評価を受けています。特に学外実習においては関連病院の先生方の熱心なご指導により、大学病院では経験できない疾患を経験でき、学生から大変好評を得ています。我々医局員も神経学の魅力や面白さ、奥深さを引き続き伝えていく所存です。

 初期研修医終了者アンケートにおいて、内科診療科のなかで当科はトップの評価を受けました。その主な理由としては、指導が良い、指導が熱心、学会発表を経験させてもらったなどでした。今後、当病院の初期研修医が増加することが予想されており、引き続き積極的に初期研修医を受け入れ指導していきたいと思います。初期研修医向けに、平成30年7月15日、16日に「研修医のための神経内科セミナー」(通称:蔵王セミナー)、10月20日に医局説明会を開催し、県内外から非常に多くの研修医が集まり大盛況のうちに終了しました。いずれも非常に大切なリクルート活動と考えております。同窓の先生方には様々なご支援をいただき誠にありがとうございます。お陰様で平成31年度も先に述べました4人の先生が入局しました。

 後期研修医向けには、一年を通して実際の診療に役立つ「実践セミナー」を行っております。下半期には新患外来診察を行ってもらい、水曜日にその診断結果についてみなで検討しフィードバックしております。また、積極的に各研究会に参加し最前線の研究について学んでいただくとともに、神経学会や内科学会地方会での発表や症例報告ができるように指導をしております。

 人事面では、長年、病棟医長を努められた前医局長の黒田宙先生がみやぎ県南中核病院にご異動になりました。最近10年間では最も在任期間が長い病棟医長になり、同僚医師、看護師の医療スタッフから非常に信頼が厚く愛されておりました。益々のご活躍が期待されます。先に述べましたように平成30年10月から割田先生が黒田先生に代わり病棟医長に就任されております。また、長らく病棟指導医の中心的役割を果たしておりました菅野直人先生が外来医となり、池田謙輔先生が新たに病棟指導医として加わりました。教授秘書として、今野育子さん、技術補佐員(生検筋病理診断)として、鴫原妃奈子さんが加わり、一緒に仕事をしていただいております。

 同窓の先生方には様々な場面でご支援いただき大変ありがとうございます。今後も変わらぬご指導・ご鞭撻をどうぞよろしくお願い致します。
(医局長 菊池昭夫)

活動状況(2017年度)  
外来患者数 初診 503,再来のべ 8,008名
退院患者数(剖検数) 450名(1)
論文・総説その他 49編(英文 27,和文 22)
学会発表 90題(国際 35,国内 55)
研究会・講演会等 22題
競争的資金・研究助成金 18件

2017年度 活動報告

 

平成29(2017)年度は青木正志教授が着任されて7年目に入りました。日々はあっという間ですが、あらたな課題を迎えては常にそれをチャンスにかえ、教室の発展につなげることを要としています。そのようにして今年度も、教育,研究,臨床、および「橋渡し研究(translational research, TR)の実践」をかかげ教室員一同、心をひとつに日夜奮闘いたしました。

もっとも大切な教室のミッションは教育であり、多様な神経内科医を増やし育てることです。紆余曲折を経た新専門医制度が平成30年4月1日ついにスタートし、新たな内科専門医制度のもと神経内科は内科のsubspecialtyとして専門研修プログラムを整備しました。内科を専攻する医師そのものの減少、神経内科専攻医の減少、都市部への集中が危惧されています。私たちが医学部学生教育に力を入れ、内科学、神経学の魅力を説きつづける姿勢に変わりはありませんが、これまで以上の危機感をもって、教室全体でリクルート活動にとりくむ必要があります。

このような中、毎年恒例の「研修医のための神経内科セミナー」は7回目を迎え(2017年7月15〜16日)、神経学に惹かれた初期研修医を当教室にリクルートする重要な活動となっています。今年度は教室員27名で松島にて10名の参加者を迎え、大変盛会でした。しかし、直近3年の本セミナー推移をふり返りますと、参加者および入局者に若干の減少を認めます(データ提供:前リクルート担当・西山修平先生)。本セミナー参加者には一定の入局者が含まれ、2年続けて参加する“リピーター”は100%入局している事実からは、参加者全体を増やす必要があります。そのためにも旧来以上に (1) 実習に参加した医学生とのつながりを保ち、(2) 主な研修先病院と連携を密にとり、さらに (3) 幅広く門戸を開き多様なキャリアパスを具体的に示すことが私たちに求められています。リクルート担当(鈴木直輝先生)を中心に、教室web更新、医学生・研修医を対象とした神経内科ニュースレター配信、そして教室説明会の前倒し開催など、新たな戦略を加えた活動をおこなってまいります。

2018年春の新入局医は個性あふれる4名です:松本勇貴先生、張替宗介先生、松原史歩先生、大野尭之先生がさっそく病棟で学び始めました。また、防衛医科大学校から阪本直広先生が最新の神経内科・臨床研修を目的とした通修のため毎週2日間、病棟で指導を受けています。彼らの研修目標は「診断,治療,療養をマネジメントできる神経内科医となる」ことであり、卒後教育担当主任(菅野直人先生)を中心に情熱をもって教育してまいります。

ところで、長年親しんだ脳神経外科との西11階病棟は「病床再編・共通病床化」の病院方針にしたがい2018年7月から東12階病棟へ引越となります。神経内科も28床から25床に減じる一方で、高次脳機能障害科・てんかん科・肢体不自由および内部障害リハビリテーション科との全5科で病棟をともにする見込みです。とりわけ高次脳機能障害科やてんかん科とは患者さんを通して連携する点が多く、これまで以上の円滑な協働が期待できます。なお、当院の方針は引き続き初診外来増と再来減、逆紹介推進、そして新規入院5%増(在院日数1日短縮)です。2018年度は病棟医長(黒田 宙先生)や外来医長(菊池昭夫先生)のもと、一致団結する年となりましょう。

研究面では2018年4月14日「臨床研究法」が施行され、はじめてヒトを対象とした医薬品等の有効性・安全性を明らかにする介入研究が法の対象となりました。とくに製薬企業から資金提供を受けた臨床研究、未承認・適応外医薬品の臨床研究が「特定臨床研究」とされ、法的規制の対象となります。一方、治験はGCP(good clinical practice)を遵守しておこなうことに変わりありません。このような法律のみならず、医学研究に関するさまざまな指針を理解し、それを遵守した研究をおこなってゆくためには、研究に関する教育もまた重要であり、教員はもちろん大学院生から技術/事務補佐員にいたるまで教室として目を配る必要があります。

Parkinson病(PD)関連研究では、基礎から臨床研究まで幅広く成果が得られています。シヌクレイノパチー(PD,多系統萎縮症)およびタウオパチー(大脳皮質基底核変性症, 進行性核上性麻痺)を対象として、BF227アミロイドPETプローブおよび本学で開発された[18F]THK-5351新規タウプローブを用い、脳内に蓄積する異常凝集タンパクの経時的変化を観察しました。また、神経変性疾患における異常凝集タンパク伝播を制御する細胞内小胞輸送経路の探索とともに、異常タンパク伝播阻止に着目した新しい神経変性疾患の疾患修飾療法の確立を目指した研究を続けています。今年度はPARK21家族性パーキンソン病原因遺伝子DNAJC13変異に起因した細胞内輸送障害、αシヌクレイン蓄積と神経変性誘導メカニズムについて論文発表しました。さらに、重度嗅覚障害を有するPDを対象としたドネペジルの認知症予防効果に関する国内多施設共同研究(Donepezil Application for Severe Hyposmic Parkinson Disease: DASH-PD)にも継続して参画しています。同チームの薫陶を受けた小林潤平先生とショウジョウバエを用いたin vivo研究(大阪大学に内地留学)を得意とする吉田 隼先生は無事学位を取得され、お二人とも益々熱のこもった実験の日々を継続しています。

多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)を主とした神経免疫関連研究では、MOG(myelin oligodendrocyte glycoprotein)抗体が介在する中枢神経脱髄疾患の臨床研究やMSにおける進行性多巣性白質脳症(PML)病態の研究、そしてNMOの病態研究を行っています。MOG抗体では、大脳皮質表層に病変の局在する皮質性脳炎として、一側大脳皮質に出現し痙攣発作を伴う皮質性脱髄疾患にMOG抗体が関連することを明らかにしました。また、前頭頭頂部の大脳皮質に両側性病変をきたし、臨床的に対麻痺を来す皮質性脱髄にもMOG抗体が関連することを報告しています。一方、MS疾患修飾薬のひとつFingolimod使用中にPMLを発症した症例では、脳脊髄液中JCウイルスの検出が難しい早期PMLにおける診断上の課題や病理学的特徴を含めて報告しました。同チームの小川 諒先生が無事学位を取得され、小野紘彦先生は国立精神・神経医療研究センターへの内地留学から戻られました。お二人とも今後益々の活躍が期待されています。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)・筋疾患研究では、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析、疾患特異的iPS細胞によるヒトALS細胞モデルの開発、そしてALS動物モデルを用いた治療法開発研究を継続しています。家族性ALSは’91年から123家系集積され、およそ半数の原因遺伝子を明らかにしています。未同定家系には全エクソン(エクソーム)解析を実施し、有力候補バリアントの絞り込みをおこなっています。一方、109を数えるdysferlin異常症例のうち約2割を占める原因遺伝子未同定例にエクソーム解析を実施することで遺伝学的背景を詳らかにしています。さらに、iPS細胞由来運動ニューロン軸索のトランスクリプトーム解析、dysferlin結合タンパクの探索、ALS活性化アストロサイトへの介入研究も実施中です。2つの医師主導治験、アセノイラミン酸徐放剤の経口投与によるGNEミオパチーの第II/III相試験、および肝細胞増殖因子(HGF)脊髄腔内反復投与によるALSの第II相試験は、現在もなおproof of concept取得をめざし奮闘中です。同チームで指導を受けた池田謙輔先生も無事学位を取得されました。

人事では、長年にわたり研究費経理事務を担当された武藤久美子さんが退職となり、新たに高橋綾香さんが加わって3名の秘書室体制となりました。技術補佐員には熱海万裕さん、伊藤友江さん、松山和佳奈さんが仲間入りして、血清・脳脊髄液などの臨床検体の管理と基礎的研究を日々支えて下さっています。2018年春から私たち教員は次表のような役割分担でスタートしております。同窓の先生方には日常の診療連携のみならず、研修医のご指導、医学生の学外実習、新人リクルート、研究へのご支援まで大変お世話になっております。あらためて深く御礼申し上げますとともに、変わらぬご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

(2018年度前期医局長 割田 仁)

活動状況(H30年度)  
外来患者数 のべ9013名(うち新患 1072名)
退院患者数 384名
剖検数 3例
論文・総説その他 49編(英文 33,和文 16)
学会発表 65題(国際 12,国内 53)
研究会・講演会等 28題
競争的資金・研究助成金 17件

 

2016年度 活動報告

 

平成28(2016)年度は青木正志教授が着任されて6年目に入りました。「一番難しい患者さんを診療できるようになろう」という号令のもと、教育,研究,臨牀、および「橋渡し研究(translational research, TR)の実践」をかかげて教室員一同、日夜活動しています。

もっとも大切な神経内科医の育成では近年、医学部学生教育に力を入れてきた成果が実感されます。2008年に教育体制を刷新した結果、医学部5年生の半数強(脳神経外科との選択制)を3週間じっくり教えられるようになりました。そして今回のカリキュラム再改訂により実習期間が延長かつ前倒しされ、2017年度から6〜7名が4週ずつ配属されるようになりました(脳神経外科・心臓血管外科との選択制)。これには教育担当主任(菊池昭夫先生)が知恵をしぼってプログラム改訂を先導し、教員・医員全体の協力を得る体制ができました。

医学部学生に何より評判なのは,配属される病棟チームの個性的な指導医の面々です。また効果的に配された演習シリーズ、少人数・希望者のみの選択制演習が好評です。加えて、脳神経外科の總回診や手術見学にも一部参加できる選択肢の豊富さが特長です。さらに学生諸君に尋ねると、教授手ずから指導される新患外来実習がインパクト絶大のようです。結果として、学生による実習評価は第1位に返り咲きました(2015年度)。新年度も、神経学の通論講義神経学的診察実習(いずれも4年生)、そして高次医学修練(6年生)など熱心にとりくみ、神経内科と神経科学の魅力を説きつづけてまいります。

一方、「研修医のための神経内科セミナー」(通称:蔵王セミナー)は毎年恒例となりました。本セミナーに2回参加した研修医はきわめて高確率で神経内科を専攻していることからも、重要なリクルート活動といえます。第6回は2016年7月17〜18日に開催し、夜半まで活気あふれるセミナーとなりました。続いて11月19日には教室説明会も開催した結果、今春には5名の後期研修医を当科に迎えることができました。石山 駿先生、此松和俊先生、曽我天馬先生、豊嶋昌弥先生(1年間の大崎市民病院後期研修後)、そして生田目千尋先生です。熱心で一体感のある彼らが成長するのを上手にサポートしたいと思いますので、ご期待ください。当教室としては年10名の新人参入をめざしており、まだまだ工夫と努力が必要です。

そのためにも卒後教育の改善に注力しています。神経内科を専攻した彼らにとって、最初の1年は神経内科医としての核をつくる大切な時期となります。「診断,治療,療養をマネジメントできる神経内科医になる」を目標に、卒後教育担当主任(菅野直人先生)が作成したプログラムに沿って学びます。教室内外の講師による「実践セミナー」では、神経内科診療の基本を学ぶ「スタートアップ編」、専門診療から治験までカバーする「ステップアップ編」、さらに大学院を見据えた「研究編」へと、好機を逃さず幅広く学べる環境を提供しています。病棟診療に慣れてきた後半期には、初診外来研修(half-day-back, HDB)で一定時間内に効率よく進める技術を学べます。このように、学会発表・症例報告の執筆や将来的なsubspecialty選択にもつながる教育を今後も継続してまいります。

研究面では「新医学系指針」への対応、全学をあげての「公正な研究活動推進」、病院内の「臨床研究マネージャー制度」や「臨床研究ピアレビュー委員会」設立など、次々と新たな業務が加わり、膨大な書類作業はとどまるところを知りません。そのような趨勢のもとでなお、Parkinson病(PD)関連疾患、多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)を主とした神経免疫疾患、そして筋萎縮性側索硬化症(ALS)・筋疾患という3つの研究チームが着実に成果を挙げています(「研究トピックス」をぜひご覧ください)。また、「新しいことに取り組もう」というかけ声のもと2016年度も15名の大学院生が独立した研究者をめざし各チームの教員に学んでいます。

PD関連研究では、BF227アミロイドPETプローブを用いたin vivoシヌクレインイメージングに続き、本学発の新規タウプローブ[18F]THK-5351を用い、世界に先駆けて大脳皮質基底核変性症候群(CBS)脳内に蓄積する線維化タウ蛋白の可視化に成功しました。また、小胞輸送異常に着目したPD発症機構の解明では、異常凝集タンパク伝播を制御する細胞内小胞輸送経路の探索とともに、その伝播阻止に着目した新たな疾患修飾療法の確立をめざしています。留学先でエピジェネティクス研究に成果を挙げた菅野直人先生の復帰は心強い限りで、ますますの発展が期待されます。このような成果に対し、本研究チームをリードしている長谷川隆文先生が平成28年度医学部奨学賞「金賞」を受賞されました。

MS・NMO関連研究では、MOG(myelin oligodendrocyte glycoprotein)抗体が介在する中枢神経脱髄疾患の臨床研究、およびNMOモデル動物を用いた病態研究が進展しています。MOG抗体関連疾患ではアストロサイト傷害を欠く点で明らかにNMOと異なること、急性の大脳皮質病変がよく起こること、概して予後良好ながら長大な視神経病変を伴うこと、そしてNMO同様に延髄症候群としての難治性吃逆を生じ得ることなど、次々に明らかにしました。また、MSにおける進行性脳萎縮は若年で始まり疾患障害度と相関することも明らかにしています。さらに新しいNMO動物モデルも開発し解析中です。同チームで指導を受けた赤石哲也先生は学位取得のみならず複数の論文を発表され、日本神経学会専門医に合格、さらには第9回東北医学会奨学賞B(大学院生対象)受賞と大活躍でした。

ALS・筋疾患研究では、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析、iPS細胞・ゲノム編集技術を用いたヒト細胞モデルの開発、ALS動物モデルを用いた治療法開発研究を継続しています。1991年から当教室で集積した111もの家族性ALSのうち原因未同定45家系について網羅的解析をおこない、日本人家族性ALSの遺伝学的背景の一端を解明しました。同様な解析にて、106を数えるdysferlin異常症例の遺伝学的背景も解明しています。この家族性ALSの患者由来iPS細胞を用いた運動ニューロン病態研究は、iPS細胞拠点の支援も受けつつ治療標的の探索を続けています。TRの一環としては、N-アセチルノイラミン酸徐放剤の経口投与によるGNEミオパチーの第II/III相試験、および肝細胞増殖因子(HGF)の脊髄腔内反復投与によるALSの第II相試験という2つの医師主導治験を現在も継続しています。同チームで指導を受けた小野洋也先生、遺伝医療学でも研鑽を積まれた西山亜由美先生は無事学位を取得されました。

臨牀面では、特定機能病院としての高度先進医療と治験、常に研究とリンクした専門外来(PD関連疾患,MS・NMO,ミオパチー,ALS,HGF治験)、そして積極的にセカンドオピニオン外来を実施しています。初診外来にご紹介いただく多くの診断困難例や希少性神経筋疾患には引き続き力を入れておりますが、慢性的な病床不足は相変わらずで常に60〜70名の入院待機が懸案です。また、救急医療の要でもある当院の高度救急救命センターでは、ひきつづき入野樹美先生が専門性を発揮しつつ、救急医学会専門医としても活躍されています。初診を増やす一方で再来を減じる病院の方針が明示されており、機をみて診療科の統廃合と病床整理が行われていることから、私たち神経内科も将来を先取りした診療体制の整備を求められています。

人事では、2017年4月より中島一郎准教授が東北医科薬科大学病院・神経内科長、医学部老年神経内科学・初代教授として赴任されました。中島先生はMS・NMOの臨牀・研究のみならず神経免疫疾患の治験促進にとり組まれ、また国内外で教室の成果を発信し続けてくださいました。県内にはじめて大学病院神経内科が2つとなることから、その協力体制の発展を期待しております。一方、2015年10月から大学院生として井上(渋井)彩先生(遺伝医療学)、渡辺靖章先生(細胞増殖制御分野)が研究をスタートしています。技術補佐員としても新たに伊藤香蘭さん、方 素羅さんが加わっています。また、退職された齋藤也実さんと八谷静夏さんに代わり、菊地明日香さん、この4月から熊上 麗さんが秘書として参画し、文字通り教室を支えてくださっています。

同窓の先生方には日常の診療連携から医学生の学外実習、新人リクルート、研究へのご支援まで大変お世話になっております。心より御礼申し上げますとともに、変わらぬご指導を今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

(2017年度医局長 割田 仁)

活動状況(2016年度)  
外来患者数 初診 567,再来のべ 7,853名
退院患者数(剖検数) 432名(0)
論文・総説その他 46編(英文 37,和文 9)
学会発表 65題(国際 19,国内 46)
研究会・講演会等 32題
競争的資金・研究助成金 14件

 

2015年度 活動報告

 

平成27(2015)年度は青木正志教授が着任されて5年目に入りました。常に新しいことに取り組もうという号令のもと、大学の臨床教室として基本となる教育,研究,そして臨牀の3本柱に加え、「橋渡し研究(translational research, TR)の実践」をかかげて教室員一同、日夜活動を続けています。当教室では2016年、TR実践の一環としてN-アセチルノイラミン酸徐放剤の経口投与によるGNEミオパチー(縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー)の第II/III相試験、および肝細胞増殖因子(HGF)の脊髄腔内反復投与によるALSの第II相試験という2つの医師主導治験を開始しました。

もっとも大切な神経内科医の育成は、(1) 医学部学生の卒前教育に始まり (2) 初期・後期研修医リクルート、(3) 神経内科専攻医の教育 へとつながります。当科は2008年より学生教育体制を刷新し、医学部4年生を対象とした神経学の通論講義、神経学的診察実習、そして医学部5・6年生を対象とした診療参加型実習に注力し、神経内科と神経科学の魅力を説いてまいりました。教育担当主任(現・菊池昭夫先生)による先導のもと、毎年学生アンケートでは1位・2位を争う高い評価を受けていますが、平成生まれでITとガイドラインに恵まれた新世代に対しては、新内科専門医制度も見据えたアプローチの改善を迫られています。

一方、卒後教育担当主任(現・西山修平先生)がリードし、大学院生や若手医師も準備に勤しむ「研修医のための神経内科セミナー」(通称:蔵王セミナー)は重要なリクルート活動です。今回2015年7月18日で第5回を数え、県内外から多くの活気あふれる研修医が集まり大盛況でした。続いて11月28日には当科の医局説明会も開催しました。お陰様で2016年春には7名の後期研修医を当科に迎えることができました。杉村容子先生、武井健太郎先生、池之内 初先生、小野理佐子先生、佐藤遼佑先生、中村貴彬先生・尚子先生ご夫妻です。いずれも優秀かつ個性豊かな面々で、即戦力として診療に活躍しています。さらに、豊嶋昌弥先生は大崎市民病院で神経内科後期研修を開始しており、来年当院での研修が期待されています。

神経内科専攻医はまず病棟で主治医となり、じっくり神経内科の診療プロセスを学びます。たとえ1年間であっても神経内科医としての核を形成する大切な時期となるため、複数の指導医に数ヶ月ごとローテイト指導を受けられる体制のもと、毎週の總回診とカンファレンスで力を養います。共通する重要な技術は一連の「実践セミナー」で指導するほか、後半期では研究分野の最前線を知るセミナーや新患外来研修の機会も用意し、広く学べる環境づくりをしています。ひとつの症例を多角的に見つめる機会として、神経学会や内科地方会での発表はもちろん、症例報告を執筆できるよう支援しています。

研究面ではParkinson病(PD)関連疾患研究チーム、多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)を研究対象とした免疫性神経疾患研究チーム、そして筋萎縮性側索硬化症(ALS)・筋疾患研究チームがそれぞれ複数の研究成果を挙げました。これらは学内外における共同研究の成果でもありますが、特筆すべきは若手医師の積極的な大学院研究への参画です。実際、上述の成果は彼等が筆頭著者となって国際誌に報告し、国内外の学会でも積極的に発表して高い評価を受けています。彼らが大学院卒業後も研究を継続・発展させphysician scientistとしていかに前進してゆくか、大いに期待されています。 PD関連研究では、機能画像を駆使した臨床研究、培養細胞と動物モデルを用いた病態研究を発展させています。なかでも細胞内小胞輸送と細胞外小胞に注目した一連の基礎的研究の成果は大きく注目されています。ごく最近、ESCRT-0/Hrs分子異常によって神経変性をきたすことをメカニズムも含めて明確に示した論文はScientific Reports誌に掲載されました。筆頭著者の大嶋龍司先生は本研究で学位取得後、今春より当科病棟で指導医として活躍中です。2014年5月から独Tuebingen大学へ留学しsynucleinのエピジェネティクス研究中の菅野直人先生が教室の新たな戦力として復帰される日が楽しみです。

MS・NMO関連研究では、AQP4(aquaporin-4)抗体とMOG(myelin oligodendrocyte glycoprotein)抗体が介在する中枢神経脱髄疾患の臨牀・病態研究を発展させています。国内およびブラジル、タイ、イギリス、スペインなどとの共同研究により、MOG抗体陽性視神経炎、および小児期発症脳炎・脳症の臨床的特徴が解明されつつあります。さらに、治療法開発に不可欠な動物モデルとして、AQP4高親和性モノクローナル抗体を用いた重症型NMOモデルの作成に成功し、詳細な病理学的解析結果を報告しています。このNMOラットモデルにとり組んだ黒澤和大先生は学位取得後、大崎市民病院神経内科で診療に従事されています。

ALS・筋疾患研究では、次世代シークエンサー、iPS細胞やゲノム編集といった新技術を積極的に導入しています。家族性ALS 114家系の遺伝子解析は新規原因遺伝子の発見をめざして現在も進行中ですが、本邦では30%強を占めるSOD1についでFUS変異が2番目に多く10%を占める現状が明らかとなっています。また、exome解析では遺伝性封入体ミオパチーの2家系に本邦初のMSP(multisystem proteinopathy)関連遺伝子変異を発見し報告しました。さらに、target resequencingによってdysferlin異常症の具体的遺伝子背景を明らかにしました。現在、病態を忠実に再現するALS/MSP新規細胞/動物モデル開発と変性病態解明に取り組んでいます。

こうした研究プロセスは、同窓の先生方をはじめ広く地域の先生方から託された患者さんの診断に端を発します。病因遺伝子を同定、iPS細胞を樹立、病態モデルを確立し、そして新たな診断・治療法を開発するという一連の研究を自らの手で展開できる当教室の研究環境は、極めて恵まれていると云えます。これを維持するためには10〜20年前とは比較できないほどの膨大な書類手続きと、厳しい競争的研究資金の獲得、確かな成果の発表を続けてゆく苦労を伴います。しかしながら、代々引きついだ「研究魂」とも呼ぶべき精神を教室員一丸となって発揮し、TRの実践という形で社会に還元してゆく所存です。以上のような成果は、教室ウェブで迅速に公開していますので、定期的にご覧いただけますと幸いです。

臨牀面では、特定機能病院としての先進医療、PD関連疾患、MS・NMO、ミオパチー、ALSといった専門外来を活用した治験、そしてセカンドオピニオン外来を積極的に実施しています。新患外来を入口として多数ご紹介いただく診断困難例や希少性神経筋疾患には特に力を入れていますが、慢性的な病床不足に苦しんでおり入院待機期間の短縮が喫緊の課題です。また、神経筋疾患の診断には必須の遺伝学的検査や生検筋病理診断も先達の知見を継承し、さらに新技術を取り入れ継続的に取り組んでいます*。地域医療の最後の砦でもある当院の高度救急救命センターでは搬入症例の約半数を神経疾患が占める中、入野樹美先生が専門性を発揮しています。

人事では、2015年10月に藤原一男教授が福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座に異動されました。藤原先生はMS・NMOの臨牀・研究のみならず、広く神経学を私たちにご指導くださいました。また、ダグラス佐藤先生は5年間の当教室での研鑽が大きな成果を挙げ、ブラジルにポストを得て5月帰国されました。その一方、国立病院機構八戸病院で1年間診療されていた三須建郎先生と、産休明けの秘書・岡崎芙由香さんが2016年4月から当教室に復帰してくださいました。なお、2015年4月より宮城県神経難病医療連携センター事務局が当院地域医療連携センターに移り、難病医療専門員の関本聖子さん、遠藤久美子さんがネットワーク事業を継続してくださっています。

同窓の先生方には日常の診療連携から新人リクルートへのご支援まで大変お世話になっております。変わらぬご指導を今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

(2016年度医局長 割田 仁)

活動状況(2015年度)  
外来患者数 初診 525名,再来のべ 7,920名
退院患者数(剖検数) 409名(1)
論文・総説その他 20編(英文 18,和文 2)
学会発表 60題(国際 25,国内 35)
研究会・講演会等 20題
競争的資金・研究助成金 9件

 

2014年度 活動報告

 

光陰逝水の如し、平成26(2014)年度は青木正志教授が着任され早4年目となります。教室内では青木先生をはじめとするスタッフを中心に新しい取り組みが次々とスタートし、以前にも増して臨床・研究・教育の各領域において着実に成果が出てきております。ALSの臨床・病態研究については従来から進めてきた肝細胞増殖因子(HGF)第I相治験が終了し、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーに対するN-アセチルノイラミン酸の医師主導・第2/3相治験の準備を行っています。また、患者由来iPS細胞を用いた研究や神経筋疾患の遺伝子診断パネル作製の取り組みが進んでいます。パーキンソン病研究では、細胞生物学およびショウジョウバエ・コンディショナルノックアウトマウスなどの動物モデルを駆使した分子病態解析・新規治療探索について国内外との共同研究を進めると共に、機能画像を駆使した臨床研究で複数の新知見を論文発表し、内外より高い評価を得ています。多発性硬化症・視神経脊髄炎研究に関しては、従来の国際共同研究をさらに発展させるとともに、AQP4・MOG抗体介在性脱髄性疾患の臨床・病態研究の分野で次々と画期的な論文を発表しています。病棟若手ドクターによる英文症例報告数も増えており、論文執筆のスキルを高めるという点で良い流れが出来つつあると思います。難攻不落といわれ続けた神経筋疾患の病態解明研究、進行抑制・根治療法確立にも、もう少しで手が届く時代となって参りました。「雨だれ石を穿つ」といいます。今後も教室員一丸となり、絶え間ない努力を続けて参りたいと思います。

東日本大震災発生からすでに4年が経過し、復興を加速させるため、より具体的かつ効果的なプラン作成が求められています。被災地での医療人確保・効率的配置に関しては、東北地区での医学部新設に加え、新たな医療圏の構築が画策されています。宮城県内ではみやぎ県南中核病院、仙台市立病院、仙台医療センター、石巻赤十字病院、大崎市民病院、登米市民病院、気仙沼市立病院、公立志津川病院が基幹病院となる予定であり、ご存じの通り複数の病院ではすでに移転・新築が進んでおります。この様な流れの中、当科としても、宮城県周辺での神経内科診療の発展・向上はもとより、神経内科を志す有能な人材の確保・育成を期待して、上述の医療機関を中心に、より重点的な人的派遣を行う方針を進めて参りたいと考えております。

教室関連では、H26年5月から菅野直人助教がドイツ・チュービンゲン大学Hertie脳神経疾患研究所(Prof. Philipp Kahle)に留学されています。現地ではシヌクレインのエピジェネティクス関連の研究を継続されています。また、H26 年10月に鈴木直輝助教が米国ボストン・ハーバード大学(Prof. Kevin C. Eggan)での3年間の研究留学を終えられ、帰郷されています。留学中にはC9ORF72関連のお仕事をNature Neuroscience誌に発表されるとともに、お子さんも授かられ、公私ともに充実した時間を過ごされた様です。今後も臨床・教育は勿論、研究面において教室内に新しい息吹をもたらして下さる事を期待したいです。一方、H27年3月末をもって長年当科で多発性硬化症・視神経脊髄炎の臨床・研究を牽引されて来られた三須建郎助教と、ALSをはじめとする神経難病の臨床・治験に尽力されてきた加藤昌昭助教が、それぞれ独立行政法人・国立病院機構八戸病院および総合南東北病院(岩沼市)にご異動されました。新天地でのお二人の先生方のご活躍を祈念するとともに、今後も当科との関係を絶やさず臨床・研究面でお力添え頂ければと願っています。また、教室秘書として我々をサポートして頂いた岡崎芙由香さんがご出産のためH26年10月をもってご退職され、後任として齋藤也実さんが着任されています。さらに、岡崎さんと二人三脚で秘書業務に就いて頂いた相原久美さんがH27年3月にご退職され、後任として大串昌代さんにお越し頂いております。お二人の新しい秘書さんとも笑顔がさわやかでかつ能力に富んだ方で、医局長として大いに助かっております。このほか、震災前から5年間に渡り筋病理を中心とした業務および実験補助にご尽力されて来られた安藤里沙さんがご退職され、後任として長谷シオンさんが着任されています(H27.9月末迄の予定)。また大学院関連ではH26年度はてんかん科で研究を積まれた加藤量広先生と、当科パーキンソン病グループで研究を続けて来られた三浦永美子先生のお二人の先生が無事学位を取得されておられます。学位の仕事と関連し、加藤量広先生はてんかん治療研究振興財団の研究褒賞を、三浦永美子先生はカナダの学術評価機構のGlobal medical discoveryのkey scientific paperをそれぞれ受賞されておられます。加藤量広先生はH26年度神経内科専門医試験にも無事合格されています。このほかH26-27年度は吉田隼先生、小川諒先生、秋山徹也先生、小林潤平先生、小野紘彦先生が新たに大学院生として研究活動をスタートしており、今後の成果が期待されます。

H27年度は新たに6名の新人ドクターに加わって頂きました。最年長の渡辺源也先生は宮城県大崎市三本木出身、H19年自治医科大学をご卒業後、仙台医療センターにて初期研修を修了され、さらに米谷病院など県内複数の医療機関で研鑽を積まれて来られました。川田(かわた)健太先生は茨城県日立市出身、H20年東北大学部医学部卒業後、平鹿総合病院で2年間、さらに広南病院脳血管内科で5年間脳卒中臨床の研鑽を積まれています。小松恒太郎先生は宮城県仙台市出身で、H24年北海道大学卒業後、岩手県立中央病院で3年間の初期研修を済まされています。原田龍平先生は栃木県下野市出身、H25年に東北大学医学部卒業後、山形市立病院済生館で2年間の初期臨床研修を済まされました。また、当院老年科医員で機能画像医学研究分野・博士課程大学院生の戸恒(とつね)智子先生が、H27年4月から半年間の予定で当科にて後期研修に従事されています。何れの先生もすぐに教室の雰囲気に馴染み、毎日生き生きと診療に当たって下さっています。このほか、現在大崎市民病院神経内科で後期研修中の武井健太郎先生(H23年東北大学卒)が、H27.10月から当科へ赴任頂く予定です。

連携病院関係ではH27年3月末に複数の人事異動がありました。まず、石巻赤十字病院で長年に渡り神経内科部長としてご活躍された桧野正俊先生が、H27年4月より齋藤病院へご異動され、後任として、及川崇紀先生、成川孝一先生および加藤量広先生の3人の先生が着任されています。また、広南病院神経内科の佐藤滋先生および宮澤康一先生が、それぞれ総合南東北病院とみやぎ県南中核病院にご異動されました。それぞれの先生方には、地域における神経内科診療の益々の拡充とともに、後進の若手医師の育成にご尽力頂きたいと思います。なお、今年度は関沢剛先生、成川弘治先生および大友仁先生と、同門関係の先生が相次いで旅立たれた年でもありました。3人の先生とも人情に厚く、優しさに溢れた方でした。これまで我々に注がれた温かい心は、人々の心の中で生き続けることと思います。生前のご厚誼に深く感謝するとともに、あらためて安らかなるご冥福をお祈りしたいと思います。

お陰様で学生・研修医からは神経内科への配属希望者が年々増加しており、毎年高評価のフィードバックを獲得することが出来ております。毎年7月には一泊二日で研修医のための神経内科セミナーを企画すると共に、秋には教室説明会を開催し当科の魅力をあますところ無く伝えるとともに、若き人材に継続的な声がけを絶やさぬ様に心がけています。入局後も偏りのない知識と技術習得を促す目的で、後期研修医を対象に毎月「神経内科実践セミナー」を開催し、好評を得ております。同門の先生方のご尽力もあり、ここ数年コンスタントに多くの入局者を迎える事が出来ております。一方で、東北地区の神経内科医師数は恒常的に不足しており、大学の教育・研究のアクティビティー拡充の観点からも、今後も新人の獲得・育成に弛まず努力する必要がございます。先生方におかれましては、今後とも継続的なご協力ご支援を何卒宜しくお願い致します。

(2015年度医局長 長谷川隆文)

活動状況(2014年度)  
外来患者数 8,922名
退院患者数(剖検数) 422名(0)
論文・総説その他 87編(英文 63,和文 24)
学会発表 103題(国際 59,国内 44)
研究会・講演会等 60題
競争的資金・研究助成金 15件

 

東北大学 神経内科
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