後期研修プログラム
後期研修での目標
初期研修(2年間)の後、神経内科専門医を志す人のための研修プログラムです。Global leadershipを発揮する神経内科医を育成することを目標としています。卒後の初期研修2年間を含む6年間が専門医受験資格を得るまでの標準的な研修期間となります。この期間に、大学病院や連携病院で急性疾患から慢性疾患まで幅広く臨床研修を積みます。これにより日本内科学会認定内科医および日本神経学会専門医を取得するのに十分なトレーニングを受けることができます。
神経内科専門医として必要とされる知識・診療手技を修得するとともに、つねに最先端の医学情報を収集し、絶えず自己研鑽に努める姿勢を身につけられるよう指導します。また、学会発表、論文報告などの学術的活動についても積極的に参加を促し、国際的な視野に立って活躍してゆける基礎をつくります。とりあえずの目標は日本神経学会認定専門医の取得ですが、それにとどまらず診療・研究において指導的役割を果たせるような高いレベルでの研修達成を目標としています。
2つの後期研修コース
大学院に進む研究コースと 神経内科専門医コース
初期研修に続く後期研修の最初の2年間が本プログラムの導入部となります。このタームの主眼は、私たちが考える神経内科医としての基本、いわゆる診断、治療、療養のマネージメントのスキルを身につける事にあります。神経内科という診療科がカバーする領域は幅広く、そこには急性期疾患と慢性疾患、いわゆるcommon diseaseと極めてまれな病気、治療法が確立されている疾患と療養整備が主体となる疾患、といった大きな振れ幅のある患者さんが存在することとなります。これは個々の状況に応じて、診断そして最良の対応方法を考えていく能力が必要とされる事を意味します。
具体的な基本骨格は、
(2) これに基づく鑑別疾患と検査の組み立て
(3) “意図が伝わる”病状説明
(4) 根拠のある治療法選択、または最良の療養環境整備 となります。
これらの点を効率良く学び、プログラム参加者の誰もが目標を達成しうるカリキュラムを当科では確立しつつあり、そのひとつはこのページの最後に示されている実践セミナーです。本セミナー内容は前年度の経験や、知っておくべき神経学上の重要な新知見をふまえ毎年更新されます。後期研修後半には関連病院をローテートし、前述の多彩な疾患像を幅広く経験する事ができますが、最初に身につけられた基本的な神経学の考え方は、その後の経験における質の向上に多大に寄与します。
年に複数回の学会・研究会での症例発表は、文献検索を重ねる事により同僚や指導医の知らない深い領域を知る楽しみが得られるでしょうし、このような積み重ねの中で神経内科専門医受験に必要な知識が身に付くのは自然な事です。神経内科専門医の取得は神経内科医としての通過点のひとつに過ぎませんが、重要なステップとなることでしょう。
後期研修3年目からは大学院に進む研究コースと神経内科専門医コースに分かれます。いずれに進んだ場合においてもなんらかの形でリサーチに関わることとなるでしょう。それが分子生物学であっても症例のまとめであったとしても、疾患の理解を深めるという点においてはアプローチが異なるだけで同義といえます。一方、当教室の強みとして大学院研究が盛んである、ということが挙げられます。できるだけ早い時期に基礎・臨床研究にとりくむことは将来的に指導的立場となる上では大切と考えられ、大学院研究を皆さんに勧めています。教室内では、生化学、分子生物学、細胞生物学などのミクロの視点で行われている研究から、遺伝子改変動物を用いた個体レベルでの研究、神経生理学や脳機能画像を用いた基礎・臨床研究、疫学研究など多彩な研究をおこなっています。
認定制度の二段階化にともない、研修前半は総合病院での研修を中心として内科認定医取得に充分な研修内容を経験できるようにします。後半は希望により研修の場所や期間を変更することもできます。こうした臨床研修と並行して、大学院社会人入学枠などを利用して学位取得を目指すことも可能です。研修計画は個々の将来設計(専門とする疾患数や研修内容)をふまえ、相談しながら決定されます。
卒後研修の概要
研修内容 | 研修目標 | |
---|---|---|
初期研修1年目 | 初期研修 | |
初期研修2年目 | 初期研修(自由選択) | |
後期研修1年目 | 東北大学病院 病棟研修医 | (大学院入学可能) |
後期研修2年目 | 連携総合(救急指定)病院 専門研修 | 内科学会認定資格 取得 |
大学院1年生 | 研究 | |
大学院2年生 | 研究 | |
大学院3年生 | 研究 | |
大学院4年生 | 研究 | 博士号取得 |
卒後9年目〜 | 東北大学病院・連携病院 指導医 | 神経内科専門医資格 取得 |
研修内容 | 研修目標 | |
---|---|---|
初期研修1年目 | 初期研修 | |
初期研修2年目 | 初期研修(自由選択) | |
後期研修1年目 | 東北大学病院 病棟研修医 | |
後期研修2年目 | 連携総合(救急指定)病院 専門研修 | 内科学会認定医資格 取得 |
後期研修3年目 | 東北大学病院・連携総合病院 指導医 | |
後期研修4年目 | 東北大学病院・連携総合病院 指導医 | |
卒後7年目〜 | 東北大学病院 指導医 | 神経内科専門医資格 取得 |
後期研修医年間スケジュール
後期研修1年目
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
神経学会学術大会 (Hans-on セミナー) |
神経学会東北地方会 (症例発表) |
神経生理学会講習 | 神経病理東北 地方会 |
厚労省班会議参加 | 神経学会東北地方会 (症例発表) |
後期研修2年目
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
国際学会参加 (AAN) |
神経学会学術大会(発表) (Hans-on セミナー) |
神経病理 教育セミナー |
神経学会東北地方会 (症例発表) |
神経生理学会 講習 |
神経病理東北地方会 (発表) |
厚労省 班会議参加 |
神経学会東北地方会 (症例発表) |
学会・研究会
神経学会東北地方会 | 症例発表(年2回) |
神経病学会東北地方会 | 症例発表(剖検・生検症例) |
臨床神経生理学会 | 神経生理トレーニングコース受講 |
Hands-onセミナー(日本神経学会) | 筋電図・脳波判読・電気生理 頸動脈エコー・経頭蓋ドップラー ボトックストレーニング・高次脳機能検査 |
内科合同カンファレンス | 各科持ち回り(毎月開催) |
神経放射線カンファレンス | 年4回(H23 3/4、6/3、9/1、11/18) |
神経内科症例検討会(神経病理CPC含む) | 年4回 |
推奨される研究会
神経学会学術大会 | 生涯教育セミナー |
神経病理学会 | コアカリキュラム教育セミナー |
平尾朝雄教授 | 神経病理セミナー |
国際学会(2年目) | AANでの教育コース聴講など |
班会議・各種専門学会への出席 | |
筋病理セミナー | 精神・神経医療研究センター主催 |
後期研修医週間スケジュール
HDB:Half Day Back後期研修医外来研修
*1 | 病棟カンファ:前日に入院した症例を簡単に担当医が紹介し、問題点などを議論します。 |
*2 | 新入院診察:週に2~3名程度の新入院患者を担当します。病歴聴取や神経診察などから鑑別疾患を考えます。 |
*3 | 病棟診療:担当症例について、必要な画像検査のオーダー、髄液検査、電気生理学検査(針筋電図や神経伝導検査など)、筋生検などを行います。診断確定後には、病状説明を行い、治療方針を決定します。 |
*4 | 後方支援カンファ:進行性の疾患や後遺症のある症例、あるいは高齢で一人暮らしであるなど、退院に向けて社会資源の利用が必要な症例について議論します。 |
*5 | 問題症例カンファ:診断に難渋している症例や、治療方針に悩んでいる症例など、病棟医が全員集合し議論する場を設けています。 |
*6 | 教授回診:自分の受け持ち症例について、病歴や神経所見、今後の検査及び治療方針などをプレゼンしてもらいます。その後、実際にベッドサイドに行き、各症例の神経診察を行った上で、問題点などを議論します。 |
*7 | 医局会、抄読会:大事な連絡事項などがあります。また、年に1~2回程度抄読会を担当します。神経内科学分野における最新の論文を1報読み、その内容を15分程度で紹介します。 |
*8 | 外来HDB(Half Day Back):後期(10月以降)に行います。外来の新患患者を1名診察し、上級医と共に診断や今後方針を議論する場を設けています。 |
神経内科実践セミナー
診断、治療、療養をマネージメントできる神経内科医を養成する目的で、毎週水曜日に学内外からの講師によるセミナーを行なっています。以下は2020年度に予定されている内容です。4~7月にはスタートアップ編として、神経内科医に必要な基本的知識と考え方を身につけます。9月以降はステップアップ編として、少し踏み込んだ神経疾患の治療方法や論文の書き方、神経病理所見などの各論セミナーが行われます。
スタートアップ編
第1回 病棟診療のめざすところ
第2回 プレゼンテーションのコツ
第3回 神経診察の基本
第4回 病棟での検査の組み方の実際
第5回 電気生理学的検査の診方とコツ
第6回 筋病理の診方
第7回 初めての神経内科外来
第8回 社会資源活用のための診療書類
第9回 専門医らしい脳血管障害の診療
第10回 高次機能の診方
第11回 新・内科専門医プログラム概要
第12回 ALS-FTD診断update
第13回 非定型parkinsonismの鑑別診断
第14回 MS/NMOの診療update
ステップアップ編
第1回 抗パーキンソン病薬の使い方
第2回 ALSのケア
第3回 神経筋疾患の治験
第4回 症例報告を書こう
第5回 神経病理の基本@
第6回 神経病理の基本A
★問い合わせ先
卒後教育担当主任:井 良樹(たかい よしき)
E-mail: web@neurol.med.tohoku.ac.jp