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研究トピックス

MS発症時における血液中の単球(マクロファージ)数は、最終的な重症度を左右する

2018/03/31

 

MS発症時における血液中の単球(マクロファージ)数は、最終的な重症度を左右する

Peripheral blood monocyte count at onset may affect the prognosis in multiple sclerosis.
Akaishi T, Takahashi T, Nakashima I. J. Neuroimmunol. 2018.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165572818300729

多発性硬化症(MS)は、脳・脊髄に時間的および空間的に散在する脱髄病変をきたす神経疾患です。自己免疫性の病態が想定されていますが、その病態はまだ解明されていません。MSの病態を解明するうえで、最終的な重症度を規定しうる病初期の免疫学的マーカーを同定することはとても重要です。
今回われわれは当科に通院中で治療開始前に血液像が調べられていたMS症例29名の発症時における血液・髄液データを網羅的に集計し、その後の病勢(MSSS)および年間再発率(ARR)との関連性を調べました。
その結果、発症時における末梢血中の単球(マクロファージ)数はその後の病勢(R=0.64; p=0.0002)と強い相関を示し、再発率とも中等度の相関を示しました。バイアスとして罹病年数や脊髄病変の有無を調整した上でもこれらの相関は維持されました。一方でMSの病態において注目されてきたリンパ球やその他の血液・髄液細胞数はいずれの予後指標とも相関を示しませんでした。
今回の結果から単球がMSの病態において重要な役割をもつこと、またMSの単球はMS以外と比べて機能的な異常があることが示唆されました。MSにおける単球系の機能解析が病態解明につながる可能性があります。(文責:赤石 哲也)

 

 

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