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研究トピックス

TPPP/p25によるオリゴデンドログリア変性に対するSIRT2阻害の影響

2010/11/15

 

Role of TPPP/p25 on α-synuclein-mediated oligodendroglial degeneration and the protective effect of SIRT2 inhibition in a cellular model of multiple system atrophy.
Hasegawa T, Baba T, Kobayashi M, Konno M, Sugeno N, Kikuchi A, Itoyama Y, Takeda A.
Neurochem Int. 2010 Sep 16. [Epub ahead of print]

多系統萎縮症(MSA, Multiple System Atrophy)はパーキンソニズム,小脳症状および自律神経障害を中核症状とし、オリゴデンドログリア(ODG)におけるαシヌクイレン(αS)陽性細胞内封入体(GCI, Glial Cytoplasmic Inclusion)の出現およびODG変性を病理学的特徴とする原因不明の神経変性疾患である。近年MSA患者脳内において、ODG特異蛋白Tubulin polymerization promoting protein (TPPP/p25)の局在変化(ミエリン→ODG細胞体)が起きていることが報告され、MSA病態における同蛋白の関与に関心が高まっている。我々はGCI形成,ODG変性過程におけるαSおよびTPPPの役割を明らかにすべく、ヒトODG系細胞を含む培養細胞系を用いた検討を実施した。その結果、 (i) TPPPがαSと特異的に会合し、そのオリゴマー化およびGCI類似の細胞内封入体形成を促進すること(図1)、(ii)αS存在下においてTPPPの発現量依存的にODGの突起退縮・アポトーシスが誘導されること(図2)、さらに (iii)ODGに発現するチューブリン脱アセチル化酵素 SIRT2の阻害により、大型のGCI様封入体形成が促進されると共にODG細胞死が抑制されることが明らかとなった(図3)。SIRT2阻害により過アセチル化された微小管は構造的に安定化することが知られている。同状況下では微小管介在能動輸送系(アグレソーム機構)がより効率的に機能し、細胞毒性を有するαSオリゴマーが速やかに大型の凝集体として隔離されるため細胞死が抑制される可能性が推察された(図4)。本研究はMSAにおけるGCI形成、ODG変性過程におけるTPPPの機能的役割を実験的に証明したのみならず、ODG変性阻止に着目した新たなMSA治療の可能性にも言及した点でユニークかつ画期的なものである。

 

 
図1 (スライド1.GIF)
 
図2 (スライド2.GIF)
 
図3 (スライド3.GIF)
 
図4 (スライド4.GIF)

 

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