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研究トピックス

浸透圧ギャップの異常は原因不明のポリニューロパチーの病態に関係する

2018/09/28

 

Abnormal Osmolality Gap Exists in Distal Symmetric Polyneuropathy. Tohoku J. Exp. Med., 2018, 246, 59-64.
Tetsuya Akaishi, Toshiyuki Takahashi, Ichiro Nakashima, Masashi Aoki

血清浸透圧の急激な変動は以前から中枢神経系に脱髄性病変をきたすことが知られていた。近年当施設より、血清と髄液の間の浸透圧バランス異常が一部の中枢神経疾患の発症に関与している可能性を報告した。しかしこれまで、浸透圧要因と末梢神経障害の関連は知られていない。遺伝子異常や自己抗体に関連した一部のポリニューロパチーを除き、CIDPを含めた多くのポリニューロパチーは原因や発症機序が知られていない。今回われわれは原因不明のポリニューロパチーの急性期における浸透圧要因の関連の有無を調べた。 本研究では前向きに集計された急性期における原因不明のポリニューロパチー連続12症例と、それ以外の神経疾患の連続176症例において、浸透圧要素を網羅的に比較検証した。その結果、浸透圧ギャップ以外の各要素に関しては両群で分布に有意差はなく重なり合っていたが、浸透圧ギャップのみ分布が大きく異なっていた。具体的には、原因不明のポリニューロパチー群12名において浸透圧ギャップは異常高値あるいは低値を呈し、いずれも予想される正常値範囲から逸脱していた(p < 0.0001, F検定)。IVIG治療後に浸透圧ギャップを測定された症例においては、治療後の値は正常範囲内であった。
以上の結果から、個別に測定された浸透圧要素とは異なる何らかの浸透圧物質の分布異常が、主に軸索障害を介してポリニューロパチーを惹起する機序が想定された。細胞外液・内液間における浸透圧物質の分布異常が神経細胞機能を障害する機序の解明が望まれる。


(文責:赤石哲也)

 

 

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