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研究トピックス

【抄読会だより】 2019年3月13日

2019/03/15

 

今週の抄読会では以下の論文が紹介され、活発な議論がおこなわれました。

Premature polyadenylation-mediated loss of stathmin-2 is a hallmark of TDP-43-dependent neurodegeneration. Melamed Z, et al. Nat Neurosci 2019; 22, 180–190. [PubMed]

【Points】 筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)はひとつのスペクトラムをなす神経変性疾患である。その鍵を握る分子がtransactive response DNA-binding protein 43(TDP-43)である。なぜならALS-FTDに共通する主な特徴は、運動ニューロンおよび大脳皮質ニューロンにおける細胞質内のTDP-43異常凝集と核内TDP-43の喪失だからである。しかも、40以上のTDP-43遺伝子(TARDBP)変異が優性遺伝性ALSに発見されている(ALS10)。
 筆者らは、RNA結合蛋白質としてさまざまなRNA代謝に関わるTDP-43が軸索再生関連分子であるstathmin-2(STMN2)の発現調節をおこなっていることを発見した。そして、TDP-43が (1) 核内で減少、または (2) 家族性ALS関連変異を有することのいずれによっても、stathmin-2 mRNAの全体的な発現低下とexon 2aを最終exonとした不完全なスプライスバリアント(短縮型stathmin-2 mRNA)生成を引き起こすことを示した。
 この異常な短縮型stathmin-2 mRNAは実際、孤発性ALS,C9orf72関連家族性ALS剖検例の脊髄運動ニューロンおよび運動皮質ニューロンに見出され、加齢正常対照群やSOD1関連家族性ALS試料には検出されなかった。さらに、TDP-43発現を抑制したヒトiPS細胞由来運動ニューロンで90%近く障害されてしまう切断後の軸索再生を stathmin-2遺伝子導入によって回復させることに成功した。

(担当:割田 仁)

 

 

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