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研究トピックス

ヒトの中枢神経系は、二酸化炭素および乳酸を髄液に排出している

2019/04/04

 

The human central nervous system discharges carbon dioxide and lactic acid into the cerebrospinal fluid. Tetsuya Akaishi, Eiko Onishi, Michiaki Abe, Hiroaki Toyama, Kota Ishizawa, Michio Kumagai, Ryosuke Kubo, Ichiro Nakashima, Masashi Aoki, Masanori Yamauchi and Tadashi Ishii. Fluids and Barriers of the CNS 2019; 16: 8

【背景】ヒトの中枢神経系はこれまで、酸素や栄養分を動脈系からとりこみ、二酸化炭素や老廃物を静脈系に排出すると考えられ、髄液循環はそれとは独立したものと考えられていました。近年glymphatic systemという概念がうまれ、血管周囲腔を介して老廃物が髄液に排出されている可能性が示唆されるようになりました。 【方法】今回わたしたちは脳の代謝動態における髄液の役割を調査する目的で、東北大学麻酔科学分野、東北大学神経内科学分野、東北大学病院総合診療科の共同研究として、神経系に病変を有しないヒトの髄液および静脈血を同時に採取し、溶存気体および乳酸の濃度を測定しました。
【結果】ヒト髄液中の酸素濃度は静脈血よりも高い値をとり、髄液が動脈血から主に産生されるという従来の概念と矛盾しない結果が得られました。一方、髄液中の二酸化炭素と乳酸の濃度も髄液で静脈血より高く、これらの物質がヒトの中枢神経系から髄液中に生理的に排出されていることが分かりました。髄液中の二酸化炭素濃度は加齢とともに低下傾向を示しました。
【謝辞】研究にご協力いただきました東北大学麻酔科の先生方、東北大学神経内科の先生方、そして研究に参加してくださった被験者の皆さまに心より御礼申し上げます。(文責:赤石 哲也、大西 詠子、石井 正)

 

 

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