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研究トピックス

髄液検査にて神経好中球病類似の所見を呈したT細胞リンパ腫の一例

2020/06/18

 

T-cell Lymphoma Presenting Neutrophilic Inflammation in the Cerebrospinal Fluid.
Takaaki Nakamura, Yoshiki Takai, Kimihiko Kaneko, Hiroshi Kuroda, Tatsuro Misu, Kiyotaka Asanuma, Ryoko Saito, Masashi Aoki.
Intern Med. 2020 Feb 15;59(4):573-576.

要旨:
 髄液検査において、好中球(多核球)優位の細胞増多は、一般的に細菌性髄膜炎や、神経ベーチェット病などの神経好中球病を示唆する所見と考えられていますが、今回私達はT細胞性悪性リンパ腫が好中球性炎症を惹起し、神経ベーチェット病との鑑別に苦慮した症例を経験しました。
 症例は66歳女性、徐々に増悪する四肢の脱力と上腹部痛を訴え、MRI検査にて脊髄長大病変および大脳に多発する病変を認め、精査目的に入院となりました。髄液検査では多核球優位の細胞増多と炎症性サイトカイン(IL-6, 8, 17)の著増を認め、好中球性炎症が示唆される結果でした。さらに全身検索の結果、両側ぶどう膜炎、胃潰瘍の併存が確認されたため、神経ベーチェット病の仮診断でステロイド治療を開始しました。しかし、ステロイド治療への反応は乏しく、のちに胃粘膜および背部腫瘤性病変の生検結果からT細胞性悪性リンパ腫の確定診断となりました。
 本例では、悪性リンパ腫に関連した炎症性サイトカインが髄腔内や腫瘍組織の好中球性炎症を惹起して、検査結果に影響を及ぼしていた可能性があり、ベーチェット病や悪性リンパ腫の診断において注意を要する現象と考えられました。

文責 中村貴彬

 

 

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