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研究トピックス

視神経脊髄炎病変における新たなアストロサイトパチー病期分類

2021/09/10

 

Staging of astrocytopathy and complement activation in neuromyelitis optica spectrum disorders
Yoshiki Takai, Tatsuro Misu, Hiroyoshi Suzuki, Toshiyuki Takahashi, Hiromi Okada, Shinya Tanaka, Kenji Okita, Shunichi Sasou, Mika Watanabe, Chihiro Namatame, Yuki Matsumoto, Hirohiko Ono, Kimihiko Kaneko, Shuhei Nishiyama, Hiroshi Kuroda, Ichiro Nakashima, Hans Lassmann, Kazuo Fujihara, Yasuto Itoyama and Masashi Aok.
Brain. 2021 Mar 12; awab102. doi: 10.1093/brain/awab102.

要旨:
AQP4抗体陽性視神経脊髄炎(NMOSD)は、自己免疫性のアストロサイト障害性疾患として知られ、神経病理学的にアストロサイトの広範な脱落と髄鞘の相対的保存により特徴付けられます。神経病理所見の評価には、その経時変化を正確にとらえるため、適切な病期分類が極めて重要ですが、アストロサイト障害に由来する病期分類の定義が存在しなかったことから、NMOSDの病理学的解析は、これまで炎症性脱髄疾患に由来する脱髄の病期分類により解析が成されてきました。
本研究では、AQP4抗体陽性が生前に判明している8例の剖検組織を用い(平均年齢56.6歳、平均罹病期間62.5カ月)、アストロサイトの形態に基づいた新たな病期分類を提唱しました。アストロサイト障害は、そのマーカーであるglial fibrillary acidic protein(GFAP)染色により、以下の4期に分類されました;
a) Astrocyte lysis :アストロサイトが広範に脱落し、GFAP陽性の細胞断片のみ認められる病変
b) Progenitor recruitment :広範な成熟アストロサイトの消失に加え、アストロサイト前駆細胞(GFAP陽性の繊維を持つ小核細胞)を認める病変
c) Protoplasmic gliosis :星状のアストロサイト足突起が認められるが、組織としてgliosisが不完全な病変
d) Fibrous gliosis :成熟アストロサイトにより覆われる病変

Astrocyte lysisとProgenitor recruitment病変は、臨床的に急性期で剖検に至った症例において多く認められましたが、NMOSD病変の特徴とされる活性補体の沈着や多角球の組織浸潤については、Astrocyte lysis病変で選択的に認められました。一方で、脱髄の活動性は両病期で同程度であったことから、NMOSDの急性期病理が、今回定義した新たな病期分類でより正確に評価できることが示されました。
Protoplasmic gliosis病変とFibrous gliosis病変は、臨床的に慢性期の症例で多く認められ、非活動性の脱髄病変を伴っていましたが、補体分解産物(C3d)は何れの病期においても認められました。この所見は、持続的な補体活性を示唆すると共に、慢性期病変において、病理学的にNMOSDと多発性硬化症などの脱髄疾患を鑑別する上で有用と考えられました。 今回提唱した、アストロサイトパチーに基づく病期分類を用いる事で、NMOSD病変の経時変化がより正確に評価が可能となり、今後その病態を解析する上で非常に有用であると考えられます。

文責 高井良樹

 

 

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