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研究トピックス

日本人家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の遺伝的背景を解明

2017/01/31

 

日本人家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の遺伝的背景を解明
Comprehensive targeted next-generation sequencing in Japanese familial amyotrophic lateral sclerosis
Nishiyama A, Niihori T, Warita H, Izumi R, Akiyama T, Kato M, Suzuki N, Aoki Y, Aoki M.
Neurobiology of Aging 2017; doi: 10.1016/j.neurobiolaging.2017.01.004
【概要】
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンの選択的な細胞死をひき起こす成人発症の神経変性疾患です。患者の約10%は家族性に発症がみられます(家族性ALS)。この家族性ALSの原因遺伝子は1993年にSOD1遺伝子が同定されて以降、これまでに25種類以上の遺伝子が報告されてきましたが、その頻度や病態は明らかとなっていません。
 東北大学神経内科では1991年以来111家系の日本人家族性ALSを集め、その原因遺伝子を探索してきました。直接塩基配列決定法(サンガーシークエンス)を用いて36家系にSOD1変異、12家系にFUS変異を同定してきましたが、残る約60%では原因遺伝子が不明でした。本研究では、遺伝医療学分野との共同研究で、遺伝子変異が未同定であった45家系(患者51名)を対象に、次世代シークエンサーを用いてALSおよび運動ニューロン疾患関連35遺伝子を標的としたターゲットリシークエンス解析をおこない、原因遺伝子を探索しました。その結果、6例にこれまでALS関連遺伝子として報告のあるANG、OPTN、SETX、TARDBP遺伝子変異を同定しました。また、1例にこれまでに同定されていない新しいALS2遺伝子変異を同定しました。  本研究成果により、当科で集積してきた日本人家族性ALS家系全体における既知の遺伝子変異の種類と頻度が明らかとなりました(【図】)。この結果は過去の報告とほぼ合致しており、日本人ALSの家族性発症要因としてはSOD1変異が最多、ついでFUS変異が多く、TARDBPおよびOPTN変異は少ないといえます。また、欧米人およびアジア人家族性ALSにおける遺伝子解析研究の結果との比較により、欧米人で最多となるC9ORF72変異がアジア人で極めてまれである一方、アジア人ではSOD1変異が最も多く、ついでFUS変異の頻度が高いことが明らかとなりました。このように家族性ALSの遺伝的背景には人種差があり、分子病態の多様性が示唆されます。
 今後も新たな家族性ALS原因遺伝子の探索を続けることでALS発症メカニズムを解明する手がかりを見出し、治療法の開発につながる病態研究を発展させることが期待されます。(文責:西山亜由美)

 

 
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