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研究トピックス

軸索内における電荷粗密波としての跳躍伝導

2018/02/28

 

軸索内における電荷粗密波としての跳躍伝導

Saltatory Conduction as an Electrostatic Compressional Wave in the Axoplasm
Tohoku J Exp Med (2018); 244(2): 151-161.
Tetsuya Akaishi
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29467340

 これまで神経伝導は、膜付近に発生する局所電流とそれに伴う膜電位変化の伝播として二次元的に説明されてきた。しかし従来の理論では、有髄神経における跳躍伝導まで数理的に扱うことは困難であった。そこで今回、軸索原形質における電荷が成す粗密波の連鎖的伝播として絞輪間の跳躍伝導を説明する伝導理論の構築を試みた。
まず、有髄神経においてランビエ絞輪間の距離は軸索径と比べて圧倒的に大きく、また髄鞘により節間の膜コンダクタンスおよびキャパシタンスは十分に低く抑えられており、節間における伝導シグナルの伝播は軸索原形質の断面全体を一方向性に進展するものと見なした。荷電粒子の粗密波を軸索断面ごとの正電荷の連鎖的な変化と捉えた場合、荷電粒子の粗密波が軸索遠位側に及ぼす静電気力の大きさは、軸索上の位置と時間の多変数関数として表される。粗密波の進展は電磁気力に基づくため、その進展様式は正電荷の時間による偏導関数を用いた比例式で表せる。この数理モデルをもとに検証すると、有髄神経における伝導速度の規定因子として軸索径よりも節間長がより重要であることが示唆された。既報のとおり軸索径と節間長の間に線形性があると仮定すれば、節間長ごとの粗密波の減衰比は、節間長の逆数に比例することが示唆され、跳躍伝導が軸索断面全体を介したある種の電流と見なせると考えられた。また、単節間長の伝導時間や、連続する絞輪群の電気的な分極状態の分布パターンが、軸索径によらず一定であることも示された。
 本理論を無髄神経における伝導理論と統一的に扱うことができるか、また軸索原形質の電気的な粗密波を実際に観測できるか、今後の検証が待たれる。(文責:赤石 哲也)

 

 

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