トップ研究活動について > 研究トピックス

研究トピックス

内側側頭葉てんかんにおける発作時心拍増加は右起始の方が左起始よりも早く始まる

2014/09/09

 

Earlier tachycardia onset in right than left mesial temporal lobe seizures

 

Kato K, Jin K, Itabashi H, Iwasaki M, Kakisaka Y, Aoki M, Nakasato N.

Neurology. 2014 [in press]

 

近年, “てんかん患者に起きる予期せぬ突然死 (sudden unexpected death in epilepsy)” が注目され, てんかん患者の心拍や呼吸を評価した研究が相次いで報告されています. てんかん発作の80%以上で頻脈となり, 特に内側側頭葉てんかんでは90%以上で発作時頻脈が認められることが知られています. 2000年前後からてんかん発作の焦点側によって心拍変化が異なるとする仮説が提唱されていました. これは右半球起始の発作時に心拍数が増加し, 左半球起始の発作時には心拍数が減少するというものです. しかし, 近年はこの仮説を支持しない結果が多く報告され, その真偽が明らかにされることはありませんでした.

今回われわれは対象症例を“内側側頭葉 (海馬・扁桃体) MRI異常を伴う内側側頭葉てんかん”に限定し, 発作時の心拍数変化を連続的に解析する方法で, このテーマに取り組みました.

 

本研究では, 当院で長時間ビデオ脳波モニタリングを施行した, 内側側頭葉にMRI異常を伴う内側側頭葉てんかん患者21 (7, 14; 年齢 13-67) から得られた計77発作を対象としました. 右起始の29発作 (患者9) と左起始の48発作 (患者12) の発作時心拍変化を比較しました.

 

その結果, 右起始では29発作全てで頻拍を認めましたが, 左起始48発作のうち頻拍を認めたのは42発作でした. 発作性脳波変化が出現した時刻を基準に, 心拍増加の始まるタイミングを比較すると, 右起始の発作時の方が左起始に比べ有意に早いタイミングでした (平均±SD, −11.5±14.8 に対し 9.2±21.7 ; p < 0.0001).

 

右起始の発作で有意に早く心拍が増加し始めたことは, 交感神経系に対する右側頭葉の影響が左側頭葉よりも優位であることを示唆しています. 左起始の発作時には頻拍を認めない場合があることや, 心拍増加を認める場合にも右起始の発作時よりも遅く始まることから, 左側頭葉から右側頭葉へ発作活動が伝播してはじめて心拍数が増加する可能性があります. 内側側頭葉てんかんにおいては, 発作時心拍増加の有無とタイミングが側方決定に有用であると考えられます(文責:加藤量広).

 

http://www.neurology.org/content/early/2014/09/05/WNL.0000000000000864.short?sid=54ba9338-5f7c-41fc-8202-3af84c1b9da4

 

 

←新しい記事へ ↑一覧へ 以前の記事へ→
東北大学 神経内科
〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1−1 TEL 022-717-7000(病院代表)