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研究トピックス

抗MOG抗体による炎症性神経傷害はアストロサイト傷害よりミエリン傷害が主体である

2016/01/26

 

Myelin injury without astrocytopathy in neuroinflammatory disorders with MOG antibodies.

Kaneko K, Sato DK, Nakashima I, Nishiyama S, Tanaka S, Marignier R, Hyun JW, Oliveira LM, Reindl M, Seifert-Held T, Sepulveda M, Siritho S, Waters PJ, Kurosawa K, Akaishi T, Kuroda H, Misu T, Prayoonwiwat N, Berger T, Saiz A, Kim HJ, Nomura K, Callegaro D, Fujihara K, Aoki M.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2016 Jan 22. pii: jnnp-2015-312676. doi: 10.1136/jnnp-2015-312676.

中枢神経系の炎症疾患には、多発性硬化症(MS)や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、視神経脊髄炎(NMO)などが含まれる。このうち、視神経脊髄炎(NMO)の多くでは、アストロサイトに発現するAQP4に対する自己抗体(抗AQP4抗体)が陽性となることが知られ、アストロサイトパチーと呼ばれていたが、近年、抗AQP4抗体陰性NMOで、ミエリンの構成蛋白であるMyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)に対する新規の自己抗体(抗MOG抗体)が見られることが報告された。また、それらは治療反応性等が異なること、抗MOG抗体は、再発性視神経炎や、小児を中心とした急性散在性能脊髄炎でも見られうることが報告された。今回、私たちは、抗MOG抗体陽性例、抗AQP4抗体陽性例、多発性硬化症、非炎症性疾患の4グループの急性期の髄液で、ミエリンの障害マーカー(Myelin basic protein(MBP))とアストロサイトの障害マーカー(Glial fibrillary acidic protein(GFAP))を測定し、臨床情報・髄液一般所見も含め解析を行い、抗MOG抗体陽性例の特徴を検討した。その結果、抗MOG陽性例は、抗AQP4陽性例やMSと比べ、発症年齢が若い、男性に多い、髄液で蛋白上昇に比べて細胞数増加が目立つといった特徴があった。また、抗MOG抗体陽性例では抗AQP4抗体陽性例のようなGFAPの上昇を認めなかったが、MBPは両者で有意差なく上昇し、MSでもMBPの上昇は見られたが、抗MOG抗体または抗AQP4抗体陽性例との間に有意な差があった。以上より、同じNMOSDとなりうるものの、抗AQP4抗体陽性例はアストロサイトパチー、抗MOG抗体陽性例は脱髄疾患であることが示された。さらに、MSと抗MOG抗体陽性脱髄疾患では、性差や発症年齢、脱髄の程度が異なっており、抗MOG抗体陽性脱髄疾患は、MSとも異なった疾患群であることが示された。
(文責 金子仁彦)

 

 

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