トップ研究活動について > 研究トピックス

研究トピックス

単クローン性アクアポリン4抗体を用いた重症型視神経脊髄炎モデルの開発

2016/01/12

 

単クローン性アクアポリン4抗体を用いた重症型視神経脊髄炎モデルの開発
Severely exacerbated neuromyelitis optica rat model with extensive astrocytopathy by high affinity anti-aquaporin-4 monoclonal antibody.
Kurosawa K, Misu T, Takai Y, Sato DK, Takahashi T, Abe Y, Iwanari H, Ogawa R, Nakashima I, Fujihara K, Hamakubo T, Yasui M, Aoki M.
Acta Neuropathol Commun 2015 Dec 4;3(1): 82, Epub ahead of print.

視神経脊髄炎(NMO)は主に視神経や脊髄の壊死性脱髄を特徴とする重篤な疾患であり、病理学的にも激しい脱髄や壊死を特徴とすることが知られている。近年は、抗アクアポリン4(AQP4)抗体によって起こる自己免疫性のアストロサイトパチーであることが判明しており、In vivo動物モデルにおいても主に患者血清から抽出した抗AQP4抗体の病原性を証明する報告が相次いでいるが、症状の重篤化や組織の広範な壊死などのNMOの臨床病理学的特徴を再現する動物モデルは未だにない。本研究においては、抗AQP4抗体がAQP4の細胞外ドメインを認識する抗体であることに着目し、Baculovirus display法を用いて立体構造を保った状態でAQP4を免疫付けして作成した単クローン性抗AQP4抗体(E5415A)を用い、より高親和性抗体を用いることで重篤な疾患モデルの作成を試みた。 結果、病変は投入する抗体用量依存的に病変の拡大を認め、E5415Aを用いたモデルでは対照群と比較して有意に12時間後までに臨床的増悪を示した。病理学的には、NMO患者血清由来IgGを用いた群では高々単位脊髄面積当たり3%程度の病変であるのに対して、E5415A群では約50%程度まで有意に病変拡大を認めた。これらは、病変局所にアストロサイトの破壊と免疫グロブリンや補体沈着を認め、また病変辺縁境界領域に好中球の著しい浸潤を認め、抗AQP4抗体によって生じる抗体介在性細胞傷害に関与している事が示唆された。また、組織の空包化や脱髄・軸索障害など、従来のモデルにないNMO類似の特徴を有していた。 我々が開発した重症型NMOモデルは、抗AQP4抗体によって好中球等の二次的炎症を介するユニークな病態モデルであり、今後の研究の発展が期待される(文責 三須)。

 

 

←新しい記事へ ↑一覧へ 以前の記事へ→
東北大学 神経内科
〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1−1 TEL 022-717-7000(病院代表)