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研究トピックス

手術で根治した、子宮肉腫に伴う再発性脳梗塞の1例

2015/10/15

 

Recurrent cerebral infarction synchronous with menorrhagia caused by endometrial stromal sarcoma

Tetsuya Akaishi, Hiroshi Kuroda, Maki Tateyama, Yoko Yoshida, Takeo Otsuki, Mika Watanabe, Nobuo Yaegashi, Masashi Aoki
J Neurol Sci. Published Online: September 25, 2015 DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.jns.2015.09.367
http://www.jns-journal.com/article/S0022-510X(15)02455-7/abstract

 症例は入院時42歳女性.既往として子宮底の壁内に腫瘤が指摘されており,ここ2年ほどで1cm大から7cm大まで増大し,過多月経を認めていた.  最初の脳梗塞は,月経開始直前の日中活動時,錯語症と失算で発症した.脳MRIで左側頭・頭頂葉の皮質に急性期梗塞巣が散在し,また右前頭葉の皮質・皮質下白質にも陳旧性梗塞巣が散在していた.ヘパリンによる治療後、クロピドグレル内服を開始した.  2回目の脳梗塞は,翌月の月経期間中の日中活動時に,左半身の痺れで再発した.右視床に梗塞巣を認めた.クロピドグレルを,ダビガトラン内服へ変更したが,次周期に過多月経をみとめ,ワーファリンへの変更を余儀なくされた.  3回目の脳梗塞は,その次の月経期間中の夜間安静時に,全身倦怠感と軽い意識障害で再発した.左後頭葉皮質に急性期梗塞巣が散在し,全身造影CTでも脾梗塞と肺梗塞を認め,全身性の血栓形成が示された.子宮壁内の腫瘤はCA125値の上昇を伴ってさらに増大しており,脳梗塞への関与が疑われ,子宮全摘術が選択された.摘出子宮の病理所見は低悪性度の子宮内膜間質肉腫であったが,付属器を含めた子宮外への浸潤はなかった.現在,子宮摘出術後3年が経過し抗凝固薬も中止されているが,脳梗塞の再発はみられていない.  CA125は腫瘍関連ムチンであり,一部の腫瘍で血栓形成性との関連が示唆されており,本患者でも再発性脳梗塞の一因と考えられた.CA125値は月経前後に上昇し,本患者の脳梗塞がいずれも月経前後に起こった点とも一致する.再発性脳梗塞と過多月経をみとめる症例では,婦人科関連の精査を行い,CA125高値を伴う婦人科腫瘍があれば切除により脳梗塞を防げる場合がある. (文責 赤石 哲也)

 

 

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