トップ研究活動について > 研究トピックス

研究トピックス

MRI, SPECTが診断に有用であったタクロリムス脳症の1例

2016/09/27

 

A mismatch between MRI lesions and SPECT hypoperfusion in tacrolimus-related encephalopathy.
Shijo T, Nishiyama S, Mukai Y, Tateyama M, Kuroda H, Aoki M.
J Neurol Sci. 2016 Aug 15;367:308-10.

タクロリムスは臓器移植や自己免疫疾患に対して用いられる免疫抑制剤である。タクロリムスの副作用のひとつにタクロリムス脳症 (tacrolimus-related encephalopathy, TRE) があり、頭痛や不眠、昏迷、けいれんなどが代表的な症状となる。TREのmagnetic resonance imaging (MRI) ではテント上に異常信号が現れることが多く、single photon emission tomography (SPECT) による検討はほとんど報告がない。今回我々は、TRE患者で、脳幹にMRIで異常信号が認められ、更にSPECTが診断に有用であった1例を経験した。症例は34歳男性。33歳時に腎移植を行った後からタクロリムス4mgを内服していた。内服開始後6ヶ月で歩行時のふらつきが出現し、MRIで橋にFLAIR高信号を認め、脳梗塞と診断され経過観察されていた。その後3ヶ月して構音障害の出現、歩行時のふらつきが増悪したため来院した。神経学的には不安・落ち着きのなさといった前頭葉症状、および小脳失調が認められた。MRIでは橋に新しいFLAIR高信号域が出現していた。SPECTでは右前頭葉の集積低下があり、MRI所見との乖離が認められた。血中タクロリムス濃度は5.9 ng/mlと正常範囲であったが、症状および画像所見よりTREが疑われ、タクロリムスをシクロスポリンに切り替えた。タクロリムス中止後より神経症状は著明に改善した。SPECTでの集積低下も、症状の消失と共に改善した。本例は、MRIに比してSPECT画像がより神経症状を反映しており、他の疾患 (脳血管障害、感染症など) とTREを鑑別する上で有用であった。免疫抑制剤を使用している患者に神経症状が出現した場合、画像検査としてMRIのみならずSPECTも考慮すべきである。(文責:四條)

 

 

←新しい記事へ ↑一覧へ 以前の記事へ→
東北大学 神経内科
〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1−1 TEL 022-717-7000(病院代表)